2022年4月21日木曜日

一人旅の話

みなさんお元気ですか、私は元気です。AA内藤より
 
今回は私が大学1年生と2年生の間の春休みに行った西日本一人旅の紀行文でも書こうかと思う。
「なんで一人旅?」と人は聞く。旅が私を呼んでいたのである。
 
思い立ったのは出発2日前。
バイトもサークルもない、まとまった休みを3月末に発見した私は例のCMさながら「そうだ、京都へ行こう」とつぶやいた。
金券ショップへ行って往路用の青春18きっぷ(1回分)と復路の京都−東京新幹線切符を購入し、その足でアルバイトへ向かう。「これが終われば一人旅……」と自分に言い聞かせながら牛丼を売り、ひたすら旅への期待を膨らませていた。
ご存知の方も多いと思うが、青春18きっぷはJR在来線のみに使える1日乗り放題きっぷだ。新幹線には乗れない。朝6時に出発し、私はのろのろと西へ運ばれていった。
ホテルは京都だが、折角乗り放題きっぷを持っているのなら途中下車などしてみたい。東海道上の主要都市を思い浮べたとき、ひらめいたのは「大垣」だった。
岐阜県大垣市は、関東の民からしてみるとそこまで有名な都市ではないだろう。私がそれを知っていたのは、関ヶ原合戦の直前に石田三成が大垣城に陣を張ったと聞いたことがあったからだ。スマホで「大垣 観光」と調べると、桜で満開の川沿いを船で下るという催しがあるらしい。基本は事前予約制だが、当日も空きがあれば電話で受け付けるというので駅のホームから連絡した。
「当日予約ですか? ……15時。ええ、それなら大丈夫ですよ。一名様ご予約ですね」
というわけで14時半ごろ、私は大垣の地へ降り立ち大きく伸びをした。(無論、ここまで朝6時から乗り換え以外で一度も電車を降りていなかったのである)
大垣は「奥の細道」の終着点である事でも有名で、町のいたるところに芭蕉の句が掲げられていた。受付のお姉さんにキャリーバッグを預かってもらい、6人乗りの船にいそいそと乗り込む。三人連れの中年女性たち、地元民らしいカップル、そして私という不思議な面子での船の旅は、これがなかなか面白かった。カップルたちの突拍子もない質問と、耳が遠いおじいさん船乗りの会話。揺れる船を怖がって写真も撮れない隣の女性。一人で来たらしい怪しげな女子大生(だと思われていただろう)。
季節は三月末。桜が最も綺麗に見える時期である。船から見上げる桜と朱塗りの橋のコントラストは名状しがたい美しさだった。橋の上に大量の観光客がいることも忘れて写真を撮る。橋の上の観光客たちも桜と船の写真を撮る。結果的に知らない人とお互いに写真を撮り合っているような、変な状況だった。
船を降りるとアンケート協力を依頼された。回答すると水がもらえるらしい。埼玉から持ってきた紅茶はまだ半分ほど残っていたが、もらえるものはもらっておくに越したことはない。瓶入りの少し重い、大垣の湧き水を手に入れた。
さて、噂によると二駅先にはかの関ヶ原があるらしい。検索すると関ヶ原古戦場記念館は、今から行けばギリギリ閉館時間に間に合いそうだ。私は急ぎ足で大垣城を横目に見ながらキャリーバッグを回収し、寂れた和菓子屋で桜もなかと水まんじゅうを購入し、おまけで飴ちゃんをもらいつつ電車に飛び乗った。
 
この後も関ヶ原での山登りダッシュや30分に一本の電車との競争、御所への参内、雨の祇園散歩など様々あったのだが、長くなりすぎたのでここで終わることとする。
続きは機会があれば、またいつか。