2024年8月31日土曜日

物理学の面白さpart33(台風の進路予測の困難さ)

皆さんこんにちは。AAの佐藤です。

 昨今、台風10号の進路が不安定であり、日々台風の進路予測が大きく変わっていますよね。確か、初期のころは8/29に関東に直撃との予報だったはず。実は、台風の進路予測が難しいのはあらゆる原因があるのですが、それについて説明しようかと思います。

 

 台風の進路予測は、これまでの観測事実を考えるのはもちろんのこと、「ナビエ・ストークス方程式」という方程式の解を求める(正確に進路を出す)ことで進路予測をしています。ただ、実は、この方程式は解を求めることが未解決問題であり、一般解が求まっていないものなのです。このことで、解が一意に定めることが出来ないので、進路予測の不定性が起こってしまいます。

 そこで、ナビエ・ストークス方程式を頑張って解くために、近似を行っています。すなわち、正確には解けないけれど、影響が十分小さいものは無視したり、新たなモデルとして考え直すなどしたりして解を出します。この近似によって、どうしても進路にぶれが発生してしまうのです。

 また、ナビエ・ストークス方程式を解く上で、初期条件を与えなければなりません。初期条件とは、数式を解く初期の条件です。すなわち、0:00から予想がしたいとしたら、初期条件は0:00のときの大気の様子となります。この初期条件において、大気の様子(風速や気圧、湿度、温度など)のデータを完璧に把握することは困難であり、この初期条件のわずかな違いから実は大きく進路予測が変わってしまいます(「バタフライ効果」)。

 これら以外にも、台風の発達においては、非常に小さい範囲で急速に変化することが知られています。この変化を予測モデルで詳細に再現することは非常に困難なことであるがために予想がずれてしまいます。

 

 以上が大きな台風進路が正確に出せない要因です。私からすると、普段から発表されている台風予想の精度が極めて高いな。と感じていますが、ぜひとも皆さんは、台風予想が当たらないからと言って文句を言うのではなく、スゲーな。って思ってくれると物理屋としてはうれしいです。

 日常生活における不思議なことがあれば教えてください。教えてくれればそれについてのブログが書けるので。